レーベルとの契約を勝ち取るための確実な方法を、優しいTo Doリストとともにお伝えする「レーベルとの契約を勝ち取るための確実な方法」シリーズ。

最終回となるパート6では、音楽を提出することについてを考えてみたい。

 

 

◆音楽を提出する

とうとうここまで来た。作品を提出しよう。これまで紹介したステップの中で最も簡単である。

 

大きく3段階に分けて説明する:

・暗黙のルール

・提出の準備

・送ってみる

 

 

【暗黙のルール】

・提出する作品は、完成された、どことも契約していない、発売されていない、オリジナルの作品であること・・・リミックスやエディット、制作中の作品、そしてすでにどこかに公開アップロードしてあるものは除くこと。

 

・著作物は使用しないこと・・・チャート1位になる確証がない限り、レーベルは著作物を含む音楽をリリースしようとはしない。著作権の問題をクリアにするには多大な労力と費用がかかるからだ。かなり売れているミュージシャンでなければ難しい。小さなレーベルでは気づかないふりをして訴えられないことを祈るか、結局作品を全て放棄することになったりする。

 

・相手のことを考えること・・・人気のレーベルは大量の音源を受け取る(前にも述べているが)。全部を聞くのはとても面倒だ。あなたはこの作業をできるだけ楽にしてあげなければならない。また、常にあなたの作品は手に取られるチャンスがある。そのためには、しっかり継続して応募を続ける必要がある。

 

・量より質・・・1度に3曲以上のデモを送ってはいけない。もし送りたい曲がたくさんあっても、その中でも良いものを厳選すること。これにより、レーベルが好むであろう音楽を聴いてもらえる可能性が上がる。多くの曲を詰め込みすぎると、自信作をすぐに聴いてもらえない確率が高まるし、全て聴いてもらおうとするのはレーベルにとって大変な手間となる。EPやアルバムを送りたい場合でも、最初に1番の自信作を入れて、向こうの興味を引くことをオススメする。

 

・誰もが特別に思われたい・・・レーベルもまた同じである。複数のレーベルにまとめてデモを送るのはやめたほうがいい。私たちがここで解説しているような個人に向けたアプローチを行なっている場合は特にだ。もし仮に2社がYESを提示してきたらどうなるか?きっとうまくいかないだろう。

 

 

【提出の準備】

・適切なクオリティで出力する・・・適切なフォーマットの作品を送ること。320 kbpsのMP3が最適である。WAVやAIFなどのロスレス形式は不必要であり、相手にダウンロードしてもらうという最初の手順で自分のチャンスを台無しにしてしまうかもしれない。

 

・正しいファイル名とID3タグを使用する・・・楽曲ファイルやメールはパソコンの中で迷子になりがちだ。なので、簡単でわかりやすいファイル名とID3タグをつけること。後者はDAWもしくはiTunesのようなオーディオプレイヤーで編集できるトラック情報のことだ。アーティスト名やトラックのタイトルなどの情報と言えばわかってもらえるだろう。個人的にはどちらも"アーティスト名 - トラックタイトル(ミックスタイプ) (メールアドレス)"の形で書くことをおすすめする。レーベル側でもしどこかでこのファイルを見つけた時に、誰の何という作品でアーティストの連絡先はどこか、がすぐにわかる必要がある。

 

・ストリーミングとダウンロードを用意する・・・現代のレコードレーベルではメール添付で送られてくる作品は歓迎されないだろう。メールフィルターでファイル添付されたメールを受信箱から除外していることもあるし、そういうメールを開けずに飛ばしてしまうこともあるだろう。

レーベルに好まれるのは、馴染みのあるサービス上のストリーミングとダウンロードのリンクを送る方法だ。SoundCloudの非公開リンクかGoogleドライブのリンクがここではベストだろう。Googleドライブを使用する際は、作品がきちんと適切なフォルダにアップロードされているか確認してからURLを取得しよう。リンク共有をオンにした際に「リンクを知っている全員が閲覧可」に権限を設定するのを忘れずに。相手方にとってできるだけ余計な手間のかからないようにしなくてはならない。顔の見えないメールという手段の場合は特に。SoundCloudのアップロードでは、すべての曲のタグが正しくつけられているかどうか、説明欄にメールアドレスが書いてあるかどうか、を確認すること。アップロードした時にシェア用のリンクは発行される。

 

 

【送ってみる】

ここで序盤で行なったリサーチがようやくすべて役に立ってくる。レーベルのA&Rもしくはあなたが最も仲の良い担当者に向けて新しいメールを書き始めよう。

もし相手が良い返事をくれなかったとしても、もしかしたら他の誰かに紹介してもらえるかもしれない。

この時のメールは常に単刀直入で、短く、効率的でなければらない。そして、あなたが相手1社だけにデモを送っていて、他のレーベルには送ってないことを伝えるのを忘れないで欲しい。

 

そして前項で説明した2種類のリンクを貼り付ける。件名も重要だ。相手とある程度親しい関係であれば、「気に入ってくれると思います (Thought you’d like this)」のようなものでもいいだろう。そうでなければ、「デモ音源送付いたします(Demo Submission –)」のようなごく一般的なものにしよう。送る前に必ず添付するURLがSoundCloudやGoogleから一旦ログアウトして匿名ユーザーでも正しく機能するかから確認すること。また、自身のSNSやブランディング面がきちんと更新されているかも確認しよう。あなたのメールを開いて作品を聴いた人が、ネットであなたのことを検索する可能性も十分ありえる。

 

メールを送ったらまずは反応を待とう。もし1週間返事がなくても問題ない。リマインドするメールを送ろう。もし担当者とFacebookやTwitterでよく会話している間柄なら、そこで聞いてみても良い。 

その内容は短くてソフトなものでなくてはならない。「こんにちは、確認のためにメールいたしました(Hey A&R, just following up here.)」のような感じでいいだろう。何週間も音沙汰がないようであれば、再度送ろう。2通(通常2、3週間の間隔を空けて)の催促を送ったら、諦めて次へいかなければならないだろう。

うまくいって取引に進めたら、レーベルから引き続きの連絡があり、契約書の作成に入ることになる。打ち合わせに呼ばれるかもしれない。うまくいかなかった場合は、返信がないだろう。もしなんらかのフィードバックをもらえたら素直に聞き入れよう。成長の余地があるということだ。そして前進あるのみだ。

 

レーベルリストの1行目の会社にふられた時は、次の会社に進もう。上記のようなデモ提出のプロセスを繰り返して、待って、催促して、を何度もやる。いつか幸運が訪れるかもしれないし、そうじゃなければ、また繰り返そう。

もしどのレーベルも返信がなかったら、一度立ち止まって考えてみよう。たまたま不運な時期だったのかもしれないが、もしすべてのレーベルからネガティブな反応があったのであれば、それはもっと成長しなければならないということだ。

楽曲はもっとよくなるんじゃないか?レーベルの求めるクオリティに合っているか?関係者と十分な信頼関係を築けていたか?よく考えてみよう。

もし結論として自分に非がないということであれば、レーベルリストを5社から10社に広げてみよう。もう5社を選んで再度今回のプロセスを踏むのだ。それでもだめだったら、その時はもう一度一からやり直してみよう。

  

以上が私が伝えたかったことだ。たったこれだけだ。契約を取ることはそんなに難しいことではない。ただ、いくつかの要素の組合せが必要とされるということだ。優れた楽曲とプレゼンテーション、多少の友達とたくさんのコミュニケーション、そして根気である。これがわかっていただければ、もう契約獲得はすぐ目の前だ。

 

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