これまで音楽業界が見てきたデュオの中で間違いなく最も勢いのあるTHE CHAINSMOKERS。彼がどのようにしてフェスのヘッドライナーになれたのか。前編では、「関係を構築する」、「SNS」を軸に紹介させていただいた。この後編では、「心構え」、「体験」、「プレスキット」についてお話しさせていただく。
「心構えについて」
名前が売れてきてショーの規模が大きくなる一方で、どんな場所でも周囲に好印象を残すことは、次のステップに進むためにも引き続き不可欠である。
キャパ500人の会場でろくな振る舞いができないのに、1000人の場所に出演させてもらえるだろうか?
相手に好印象を抱かせられるかどうかは、あなたのチームメンバーによっても決まってくる。特にマネージャーである。
あなたに適切なサポートを与えることができ、あなたのキャリアを押し上げてくれる人々に囲まれていることはとても大事である。
アーティストとして、正しいマネージャーを選ぶための最も重要なものは「信頼」である。
もしあなたがマネージャーに対して全幅の信頼を寄せられない状況なら、全ての仕組みが崩れてしまうだろう。
The Chainsmokerは2012年から同じマネージャーAdam Alpertとやってきている。彼が2人を出会わせた人物でもある。
Albertはこの長きに渡るビジネス関係によって彼らをスターダムへと導いてきた。2人が正しい人物をマネージャーに選んだことは明確である。
マネージャーとして、あなたとあなたのブランドを理解してくれて、自身を成長させてくれて、さらに心から信頼できる人物を見つけることができたら、その人を手放さないために最大限の努力をしなければならない。
良いマネージャーを見つけるのは時間がかかるし難しいプロセスであり、すでにそういった人がいるということは大変価値のあることなのだ。
「体験について」
アーティストとして、どんなショーでも良いパフォーマンスができ、質の高いチームが揃い、SNSを利益につなげられる位置まで確立できたら、ようやく、フェスでのブッキングを狙い始めるタイミングだ。
キーとなるのは、あなたへオファーをする可能性が高いフェスのみに絞って事前リサーチを行うことである。
小さなフェスティバルも見逃さないで欲しい。アーティストは目標を達成するためのはしごを登るのに時間を費やす必要がある。
ローカルの小規模なフェスティバルでパフォーマンスをすることは自分の能力を上げるために良いチャンスであるし、
今後たとえば大型フェスの主催者側が、彼らの基準に見合う能力があなたにあるかどうかを測る際に、より多くの経験を積んでいることはいつでもプラスに働くだろう。
あなたがこれまでに多くのショーへの出演を重ねて期待を超える経験をしていると証明できることは、どんな言葉よりも説得力を持つ。
「プレスキットについて」
準備ができたら、いよいよフェスティバルに自己紹介と自分たちに何ができるかを説明する簡単なバイオグラフィーを含む申込書類を送ることになる。
ただし、その書類はプロらしく、写真とビデオ、プレスキットを含まなければならない。このプロセスでプロ意識を持ち続けることがキーである。
もし主催者があなたを出演させるにはまだ早いと判断しても、ネガティブに捉えて関係を断つようなことをしてはならない。
もしかしたらそのフェスが2年後に声をかけてくれるかもしれない。音楽業界のどんな局面においても、関係を断ってしまうことほど愚かなことはない。
AlpertはThe Chainsmokersを互いを出会わせた。つまり、ただ周囲に良い第一印象を与えて良い評価を得ることだけで、いつどんな大きな出会いが訪れるかわからない。
トップにたどり着き、フェスのヘッドライナーを務めるために本当に大事なのは、一段ずつはしごを登り、小さなショーへの出演を重ね、自分の道を少しずつ進んでいくことだ。
それなりの観衆の前でパフォーマンスをしたことがないアーティストをいきなりブッキングするようなフェスティバルはない。
主催者はあなたに経験があって、プレッシャーをコントロールする力があるかどうかを知りたいのだ。常に周囲に良い印象を残し、プロらしく振る舞い、焦らないことだ。
外から見て、成功したアーティストの結果に接することは簡単であるが、その後ろに隠された努力は見えにくい。
多くの人はThe Chainsmokersがブレイクした後の姿しか目にしていないため、彼らの成功の裏にある苦労の積み重ねについては全く意識されにくい。
これによって、一夜にして成功することを夢見るアーティスが増えているようだ。実際は、全ての成功したアーティストのキャリアにおいて、根気が成功の基礎である。
一段ずつキャリアのはしごを登っていくことは時間がかかるが、本当のトップに登り詰めるには必要不可欠なことのである。