様々な名曲を世に送り出したKings of Tomorrow (K.O.T.) のメイン・プロデューサーであるSandy Rivera。特に”Finally”は世界中のファンだけではなく多くのDJたちにも愛され、未だ多くのフロアでプレイされ伝説となっている。まさにニューヨーク・ハウスの重鎮だ。あらゆる音楽が交差するニューヨークで生まれ育ったプエルトリカンのSandy Riveraは、幼少期から多くの音楽に影響を受け、ソウルフルな楽曲から激しいビートトラックまで幅広い音楽を生みだすことができる天才的な存在だ。そんなSandy Riveraに今後のリリースについて、DJMagについて訊いてみた。

 

Q1. 新曲 “You Work Hard For Your Enemy feat. DaNii”が、9月2日、レーベル「Dirty Soul」からリリースされると聞きました。新曲について聞かせてください。

この曲はある恋人について書いた曲なんだ。女の子が、ちょっと無頓着な彼氏に色々感情をぶちまけるんだよ。彼らは、どちらも、気難しい上司(“The Enemy (敵)“)のせいで働き過ぎで、お互いの関係がうまく行くように十分な時間をとれてないんだ。彼女がついに溜まり兼ねて、これまでの感情や思いを吐き出すんだ。それで彼が気付いてくれることを願ってね。もう、彼は必要なものは全部持っているんだよ、と。

 

Q2. いつ頃から作曲活動をはじめるようになったのですか?

70年代に、親父が12インチのシングル・レコードを買ってきてくれたんだ。家には、偽物の暖炉があって、その中にターンテーブルとスピーカーが置いてあったんだ(変な家だよな)。レコードから音楽が流れている間中、僕は固まっちゃって、ずっと聴き続けたよ。どうやって、こんな音楽をつくれるのか知りたくて夢中だったんだ。 で、13歳の時に、NYのスパニッシュ・ハーレムでDJの練習を始めてたし、19歳で音楽制作を始めてたよ。それまでは、音楽を聞く以外に、特別な授業は受けてなかったな。一度、1時間位のピアノのレッスンを取ったけどね。先生からスケールを教えてもらったけど、教習本で、スケールとコードを勉強するように言われたんで、教習本を買って独学で勉強したよ。今では、コードも弾けるし作曲もするようになったね。僕の新作「You Work Hard For Your Enemy」は、当初、僕が歌を入れたんだ。で、DaNiiに送ったんだ。彼女が歌いなおしてくれたけど、全然良くなってたな。

 

Q3. これまで関わった作品で一番、誇らしく感じるものはありますか?

正直な話、この新曲だよ。実は、歌手を3人をNYに呼び寄せて、1ヵ月程度セッションを試みたんだけど、何もいい曲が仕上がらなかったんだ。僕が欲しかったボーカルにならなかったのと、彼らの考え方も気に入らなかったんだ。僕自身、早く曲を仕上げなきゃいけないって、神経質になってたかやる気が減退していたかだったとは思うけど。そんな中で"You Work Hard For Your Enemy"が仕上がったんだ。2時間くらいかかったかな、創作意欲が涌いてきたのは。マイクをつないで、レコードボタン押して、目を閉じて、一曲丸々、一気に仕上げたんだ。すぐに、僕の奥さんに聞いてくれって頼んで、スタジオをいったん出たんだ。彼女は、僕が1ヵ月近く、スタジオ収録で歌手とうまく行ってないのを知っていたからね。スタジオに戻ってきたとき、彼女が驚きながら、すっごくいい感じって言ってくれたんだ。それで、いろんな人に聞かせて、ボーカルを探しはじめたんだよ。バーレーンのギグで、たまたまDaNiiのマネージャーに会ったんだけど、なんとなく、彼に聞かせてみたくなったんだな。そしたら彼がすごく気に入って、DaNiiに試しに歌わせろって勧めてきたんだ。3か月後、送られてきた彼女の歌声を聞いて、感激したよ。 その後、オランダでのギグで、Dirty Soulの人間に会ったんだ。奴らに曲を聞かせたら、気に入って、Dirty Soulからリリースする話に繋がったんだ。ようやく、満足のいく曲を完成させることができたってわけだ。これが、僕の音楽人生の新しい章の開始だと思ってるよ。

 

Q4. これまでで、最も影響を受けたアーティストや刺激を受けた人物を2人挙げてください。また、どの様な影響を受けたのでしょうか?

NYで、ナイル・ロジャーズ(音楽プロデューサー)に、彼のスタジオでのセッションに呼ばれたことがあったんだ。ナイルは、フランスのレーベル・Distanceからリリースされた僕の最初のアルバム「It's In The Life Style」を聞いてくれててね。そのアルバムには、ナイルの"Got To Love Somebody"のカバーも収録されていたんだけど、ナイルが気に入ってくれて、僕に会いたいってことで実現したんだ。このアルバムには、ハウスのレコードで最高の売り上げを記録した曲でもある"Finally"や、"Young Hearts"に"K.O.T. Anthem"も収録されていたんだ。あと、1994年にバート・バカラック(音楽プロデューサー)と楽曲の出版契約を取付けたんで、これから彼の作品もリリースしていくよ。例えば、数式に、ナイル・ロジャース、バート・バカラック、ドクター・ドレ、最後にクインシー・ジョーンズを加えてみてよ。なんで僕が音楽を作り続けているかってわかるだろう? 彼ら全員からすごく刺激や影響をいっぱい受けてきたよ。

 

Q5. 今年の夏のツアー予定やニューリリースについて聞かせてください。

僕は、自分のレーベル「Deepvisionz Records」と「Blackwiz Records」を持ってるんだけど、こっちの仕事で忙しいね。今、作曲活動がノッててね、ハウス以外の音楽も作ってるんだ。あと、「サンディ・リヴェラ・プレゼンツ・ミステリアス・イープル」っていうライブの企画もあるんだ。いろんなジャンルのアーティストを紹介するから、この企画が始まったら、僕の音楽ファンが増えると思うよ。「You Work Hard For Your Enemy」では、このライブ企画の雰囲気とかスタイルを、ちょっと味わえるんじゃないかと思うよ。この夏は、ギグもこなさなくちゃいけないし、家族との時間もバランスよくとりたいから、忙しくてストレスが溜まるかな。ギグにでると音楽制作が止まるし、家族といると子供達が僕と遊びたがるしね。

 

Q6. 長年、世界中で多くのギグをこなしていますが、ダンス・ミュージック業界での大きな変化について聞かせてください。

一番大きな、そして前向きな変化といったら、技術の進歩だね。デジタル・キットでどんな音でも作れちゃうし、また、アナログに限りなく近いサウンドにも仕上げられる。ただ、その効果を最大に活かすには、アーティストがサウンドのミキシングに優れている必要があるけど。フライト中にだって1曲完成させることも可能なんだ。もちろん、十分なスペースと、長距離フライトで、寝ないつもりが前提だけどね。レコーディングしてる時間が無い時に、しかも(技術の進歩によって)いい曲を作れてしまうんだ。全ての作業をラップトップで完成させられるのってすごいね。

 

Q7. これまでのキャリアで一番衝撃的なイベントはありますか?

僕の生まれて初めての国際的なイベントは、1996年のパリでのT.G.V.I.P. (Thank God I'm A VIP)だったんだけど、そこで、マーティン・ソルヴェイグ、DJグレゴリー、DJディープに会えたんだ。凄く強烈な経験だったよ。僕の最初のギグで、1,500人以上の観客が集まるフロアに歩いて入って行ったんだ。当時、僕のレコードがフランスのラジオでよく流されていたんだ。その時だね。初めて、僕の音楽が人々に与える影響や、大きな会場で演奏したときの人々の反応の大きさに気付いたのは。NYで活動していた時には、まったく考えもしなかった。僕のレコードが世界中で売られ、世界中で流されているのは知っていたよ。だけど、正直、人々が僕の音楽にどんな風に反応するのか思いも及ばなかった。あのパリでの出来事が、僕に新しい世界観を与えたんだ。それ以来、僕は音楽を作り続け、演奏するのを一度たりとも辞めたことはないよ。

 

Q8. DJ兼プロデューサーとして、DJ Magについて意見を聞かせてください。

DJ Magはエレクトロニック・ミュージックに関するなんにでも、全てについて知ることのできるプラットフォームだね。インターネットが普及する前には、それこそ、より大勢につながる、認知してもらう唯一のプラットフォームだったしね。DJ Magのインタビューやベストチューンズのリスト、DJリスト、やクラブリストは、今だって多くのアーティストがこの業界でキャリアを築く役に立ってるしね。今回、日本の観客に向けてインタビューを請けることができて光栄だね。

 

Q9. 日本のファンへメッセージをお願いします。

Air TokyoやageHaといった東京のクラブでのプレイはすごく楽しかったよ。大好きな日本食もあるんだ。今すごくお腹空いてるからだけど、今すぐ、ちゃんとした日本の焼肉とかハンバーグを食べることしか考えられないや。また、近いうちに、ダンスフロアで皆と会える日を楽しみにしているよ。

 

自他共に認めるダンス・ミュージック・シーンの巨匠は、どんな時もダイバーシティを大切にし、ラテン音楽からニューヨーク・ヒップホップまで自由にミックスした独特の音楽観で新たな時代を作り上げた。実績実力共に十二分のSandy Riveraの今後の動きにも注目が集まっている。

 

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